
細川モモのおうちごはんラボ
vol.8『幼児の食事』

細川モモ
予防医療コンサルタント社団法人Luvtelli 東京&NewYork代表理事/2011~2014 ミス・ユニバース・ジャパンビューティキャンプ講師/農林水産省「地域食文化活性マニュアル推進・検討会」委員/『タニタとつくる美人の習慣』(講談社)発売中
毎日のうれしい・おいしいを応援!食べることでもっと健康になりたい方必見! のお食事相談。今回は、成長期を迎える幼児の食事についてアドバイスしていきます。

食が細く胃腸の弱い5歳の男の子。幼児期に必要な栄養と食事は?

■ ますさん(30代前半・女性)、息子さん(5歳男児)
■ 家族構成…ますさん、ますさんの夫、息子さんの三人暮らし
■ 会員歴8年
【食事記録】
もうすぐ6歳になる息子。食が細く、体重が平均より少ないことが気になります。また、胃腸が弱い(下痢をしやすい)ため、こんにゃくやごぼうなど繊維質の多いものがあまり食べられません。雑穀米を取り入れたり、いろいろな食材を使うようにしていますが、食事の量や栄養のバランスについてアドバイスをお願いします。

Advice 1 : ますさんの息子さんのお食事傾向

■ ますさんの息子さんの栄養グラフ
まず、現在5歳10カ月の息子さんが必要とする1日のエネルギーについて見ていきましょう。「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、3~5歳の男の子では、1日に1,300kcal、間もなく訪れる6~7歳では1,550kcalが必要と示されています。このエネルギーは、活動量が少ない小学校中学年の女の子に匹敵します。そのため、ますさんが思われている以上に、息子さんは成長の過程にあり、食事から十分なエネルギーを摂る必要があるといえますね。食事内容からは、健康に気を配っていることがよくわかり、1日に数多くの食品を摂っている点が、本当に素晴らしいです。また、炒め物や揚げ物などのカロリーの高い調理法を避けているため、ご家族にとっても身体に優しい内容になっているでしょう。
ただ、視点を変えてみると、息子さんにとっては少しカロリーが足りていない傾向があります。そのため、今よりも200kcalほど増やすことを意識しましょう。たとえば、朝と晩のごはんの量を大きめの一口分ほど増やす、あるいは間食を2回にするのも1つの方法です。良質な脂質が含まれる魚類(鮭・ブリ・ウナギ・サバなど)は鶏肉や白身魚に比べてエネルギーに富み、また脳の発育にも一役買ってくれるため、朝食や夕食に摂り入れると良いでしょう。森のバターといわれるアボカドやみかん、りんごなどの果物も間食の候補としておすすめです。
Advice 2 : 幼児期に大切な栄養素

■ 幼児期に重要な栄養素
この時期の息子さんに特に必要な栄養素は、大きく分けて3つあります。1つ目は、たんぱく質。たんぱく質は、筋肉、血液、皮膚や爪、髪など、身体のさまざまな器官に不可欠な栄養素ですので、毎食必ず1品は加えるように心がけましょう。納豆や卵、高野豆腐などを常備しておくことで、忙しい中でも効果的にたんぱく質を補えます。
2つ目は骨の発育に欠かせないカルシウムです。息子さんは、これから身長も体重も増えていく成長期を迎えますが、その過程には骨の発育が不可欠。カルシウムというと、乳製品から摂取するイメージが強いかもしれませんが、骨ごと食べられる小魚や海苔等の海草類にも豊富に含まれています。また、カルシウムを意識する際には、マグネシウム、ビタミンD、日光浴の3セットを合わせて覚えるようにしましょう。マグネシウムは、カルシウムの吸収に大きく影響しています。海草類や貝類などに豊富に含まれるので、ワカメ、ヒジキ、海苔などの食材も食卓に上るようにできると良いでしょう。ビタミンDは、カルシウムの吸収に欠かせない栄養素です。魚やきのこ類に多く含まれるので、スープやパスタにきのこ類をプラスするとカルシウムの吸収がグンとアップします。さらに、日光浴をすることで、皮膚上でビタミンDが合成されることがわかっています。このビタミンDはカルシウムの吸収のみならず、免疫にも大きな影響を与えることがわかってきました。風邪や病気を寄せ付けない身体をつくる上でも、日光浴やビタミンDを摂取することは大切です。
3つ目は血の材料となる鉄です。発達が著しい成長期は、血液も大量生産している時期ですので、“貧血は成長期の大敵”と心得ておきましょう。特に、よく運動するお子さんの場合は、汗などからも失われるので、こまめに質の良い鉄を補う必要があります。鉄には、吸収率の高い「へム鉄」(マグロ・カツオ・牛肉・レバーなど、赤身の魚や肉に含まれる動物性の鉄)と、吸収率の低い「非へム鉄」(ほうれんそう・ヒジキ・プルーンなどに含まれる植物性の鉄)とがあります。とはいっても、非へム鉄を摂取することに意味がないわけではありません。非へム鉄は、赤・黄・緑色の野菜や果物と組み合わせることで、吸収率が高まることがわかっています。毎日の食事で組み合わせを意識し、貧血知らずを目指しましょう。これらの、たんぱく質、カルシウム(マグネシウム・ビタミンD・日光浴)、鉄に関しては、息子さんのみならず、ますさん自身やご家族の健康管理にも不可欠な栄養素です。子どもも高齢者も栄養が不足することで貧血になってしまうと、食欲不振になり、さらに貧血が加速するという悪循環に陥ることが少なくありません。貧血チェックをぜひ定期的に受けてくださいね。
Advice 3 : たんぱく質とビタミンAで胃を丈夫に!
息子さんの胃腸の状態が良くないとのこと、心配ですよね。ただ、まだ幼児期であるため、胃腸の発達が未熟である可能性は十分に考えられます。
胃を丈夫にするためには、胃粘膜や胃液の材料となるたんぱく質の十分な摂取と、粘膜を強化するビタミンAの摂取がポイントになります。食事内容を見ると、たんぱく質が不足気味ですね。胃弱だけでなく、体重増加に必要な筋肉もつきにくくなってしまうため、まずはたんぱく質を強化しましょう。おやつをビスケットなどからヨーグルトやチーズに代えたり、スキムミルクや豆乳ココア(ココアは子どもが不足させやすい栄養の宝庫)にする、シラスやおかかなどの食べやすいたんぱく質をプラスするとよいと思います。成長期の子どもは、体重あたりに必要なたんぱく質量が大人よりも多いため、 ボリュームのある肉や魚も大切です。もし、消化に負担がかかっていると感じたら、レモン水を肉と一緒に出してあげると胃酸の分泌が促進され、肉の分解が楽になります。また、雑穀など消化に時間のかかるものを食べさせる場合は、よくかむことを鉄則としましょう。やわらかめに炊くことや少量から始めることをおすすめします。
また、かぼちゃや人参などのオレンジ色の食材には、体内でビタミンAに変わるβ-カロテンが豊富に含まれているため積極的に取り入れましょう。息子さんの成長に合わせて食事量を適切に増やしていくことが大切です。